異能力で動物を助けます

「お母さん、おはよう」
眠たい目をこすりながら部屋を出て居間に行った。部屋はなんか暗い。
カーテンが閉まっているからだ。
なんで開けていないのだろう。
「琴羽、おはよう。そっと、カーテンを開けてみて」
よくわからないけど、言われたとおりにする。
カーテンを開けて窓をみると、私の好きなキャラクターの飾りが窓を彩っていた。
「なにこれ!すごい。」
思わず歓声をあげる。
「琴羽、お誕生日おめでとう!」
「お母さん、ありがとう」
「昨日の夜、琴羽が寝てからこっそり準備したのよ」
すごく嬉しい。とても素敵なサプライズだよ。
でも去年まではこんなことしてくれなかったのに。
「今日は琴羽の誕生日プレゼントを買いに行こう。猫ちゃん欲しいって言っていたよね」
私は前からペット、特に猫が欲しいという話をしていたのを覚えててくれたみたいだ。
「準備できたらペットショップに行こうね」
「ペットショップじゃなくて、保護猫がいい」
私はお母さんの言葉をさえぎるように言った。
だって動物病院の手伝いをしていて知った。
たくさんの保護猫、困っている猫の存在を。
「わかった。じゃあ調べておくね」

お母さんの運転する車に乗って保護猫カフェに向かった。
お母さんやカフェのスタッフさんと相談した結果サビ柄で女の子の子猫をトライアルすることになった。
トライアルとはお試し譲渡のことだよ。
家に帰ってからも、すぐにご飯も食べてくれてすごく元気だったよ。

子猫を迎えてから数日。
名前はリンにしたよ。 
今は動物病院の休憩時間。
「沢辺さん、残念なお知らせがあるんだけど、この病院が移転することになってしまったんだ」
せっかく居場所ができたと思ってたのに。
夏休み中なんてほぼ毎日来ていたのに。
「手伝ってくれていたのに申し訳ない」
「勅使河原さんが謝ることもないですよ」
私はわざとなんてことのない振る舞いをする。
それから移転先の住所が書いてある紙をもらって病院を後にした。
移転先はだいぶ遠いところだ。
でも、移転日は夏休みが終わってから。
まだもう少し余裕あるよね。
彩音ちゃんにも伝えないと。
そう思い家に帰ってから連絡した。

彩音ちゃんとまた学校の前で待ち合わせをして動物病院に向かった。
彩音ちゃんの都合が悪く、連絡した日から少し日にちが経ってしまった。
「あの、琴羽ちゃんから聞いたんですけど、この病院って移転してしまうんですか」
彩音ちゃんは受付の人に聞いている。
信じられないよね。急すぎて。私もそうだよ。
「本当だったみたい。あっ、ごめんね。琴羽ちゃんの言っていること信じていないみたいで」
「私もだから大丈夫だよ」
今日は勅使河原さん忙しそうだったからそのまま二人で帰った。
「彩音ちゃん、うちにね子猫迎えたんだよ。名前はリンっていうの」
私は話題をそらすように話しかけた。
「見てみたい。今度、家に行ってもいい?」
「うん。親に伝えておくね」

「おじゃまします」
夏休みは終盤。彩音ちゃんがうちに来た。
「おやつあげてみる?」
彩音ちゃんが、リンと少し触れ合ってから言ってみた。そして猫用のおやつを彩音ちゃんに渡した。
「顔拭いてる。かわいい」
その気持ちはすごくわかる。
猫ってどんな仕草をしてもかわいいんだよね。
猫以外の動物もそうかもしれないけど。

夏休みがすぎて、新学期初日の学校を終え放課後。
私は荷物を持ったまま動物病院に向かった。
だって家より学校からのほうが近いから。
明日、病院が移転する日のようだ。
だから前日にあいさつを済ませておこうと思って。
「勅使河原さん。今までありがとうございました。すごくいい経験ができて将来のためにもなったと思います。なによりたくさんの動物と触れ合えて楽しかったです」
考えていたとおりに言えたかな。
最後に失礼なことしたくなかった。
「こちらこそありがとう。新しい病院にも、機会があったら来てみてね」
「はい。本当にありがとうございました」
もう一度お礼を言ってから病院を小走りで出た。
来るまではそんなことなかったのに、あいさつを終えると急に悲しくなってしまった。
でも最後は楽しく終えたかったのだ。
だからこの表情をみられたくなかったから。

「琴羽、一緒に移動教室に向かおう」
夏休み明けのある日。彩音が誘ってくれた。
「うん、行こう。彩音」
私はもうぼっちなんかじゃない。
今では、彩音とお互い呼び捨てで呼べるまで仲良くなったのだ。
でも、他のクラスメイトとの関わりは変わりはない。

その日の帰り。動物病院に寄った。
もう移転を終えたみたいで、建物の中は真っ暗で看板もなくなっていた。
移転する日など詳細を聞き忘れていた。。
でも、あいさつは昨日済ませてある。
そして、また移転先の病院に行けば会える。
未練はないよ。
「勅使河原さん、リンや彩音といった、素敵な出会いがありましたよ」