異能力で動物を助けます

「あっ、彩音《あやね》ちゃんだ」
受付付近で勅使河原さんと一緒にいると、クラスメイトがやってきて私は思わずつぶやく。
「知り合い?」
「はい、クラスメイトです」
彩音ちゃんは両親と、大型犬を連れてきた。 
彩音ちゃんってペット飼っていたんだ。
話したことないから知らなかったよ。
他のクラスメイトもほぼ話したことないから知らないけどね。
彩音ちゃんは私のことに気づいた様子だったけれど、何も言ってこなかった。
勅使河原さんはその大型犬を預かって、診察室に向かう。私もその後に続く。

彩音ちゃんの両親は、風邪気味だから連れてきたと言っていた。
「診察していくね」 
勅使河原さんは私とその大型犬、レオくんに声を掛ける。
「勅使河原さん、すごいですよ。この子病院に慣れていて、気持ちが落ち着いています」
レオくんは病院に慣れているみたいで、あまり動揺してなかった。思わず、声を上げる。
こういうことは共有しておいたほうがいいよね。
「本当だね。様子をみているだけでもわかる。よし、診察は終わった。ただの風邪だね」
そう言って看護師さんにレオくんを預ける。

「少し時間があるから少し立ち入ったこと聞いてもいいかな」
「あっ、はい」
立ち入ったことってなんのことだろうか。
私は何を聞かれるのか全く予想できず、不安。
「最近、学校は楽しくない?さっき、クラスメイトの子と全く話してなかったから」
勅使河原さんに学校のことを聞かれるのは、初めてだ。
クラスメイト同士が会って、全く言葉を交わさないなんて不自然だよね。 
「楽しくないです。クラスではこの力のせいで白い目で見られ、私はぼっちなんです」
本当のことを打ち明けてしまった。
ココミエのことを信じてくれた唯一の人だから、言っていいかなと思って。
「ひどいね。白い目で見るなんて。今は楽しくないかもしれないけど、今すぐではないかもしれないけど、素敵な出会いがあると思うよ」
勅使河原さんは、とても前向きなことを行ってくれた。素敵な出会いって、どんなことかな。
「そうですね。ありがとうございます」
なぜかわからないけど、勅使河原さんの言ってることは、本当になることなんだって気がする。

月が変わり、六月になった。
今日、動物病院に彩音ちゃんのペットのレオくんが来ている。
彩音ちゃんと彩音ちゃんの両親は待合室にいる。
「今日は健康診断だよ」
私は診察室で待機していたため、勅使河原さんが教えてくれた。
やっぱりレオくんはすごいな。
ココミエを使うと、「こんなの平気だよ」って聞こえてきた。
「異常なし。沢辺さん、看護師さんと一緒にレオくんを飼い主さんのところに連れて行ってもらってもいいかな」
「はい。私でよければ」
看護師さんと一緒にレオくんを彩音ちゃん達のところに連れて行った。
看護師さんが検査結果を伝えている。
彩音ちゃん家族は、異常がないことを知って安心したみたい。

翌日の日曜日。
動物病院のカウンターにいるけど、患者さんは来ない。
少し寂しいけれど、来ないってことは体調が悪かったり、怪我したりした動物がいないってことだからいいことだよね。
そんなことを考えていた時、ドアが開く音がした。患者さんかな。
「琴羽ちゃん、来てみたよ」
と思ったら、彩音ちゃん。
「レオくんは一緒じゃないの?」
私は問いかけてから、カウンターの外に出た。
「今日は違うよ。少し話す時間あるかな」
彩音ちゃんの方から話そうとするなんて初めてだ。
でも、私のことを直接嫌っているわけではないと思う。なんとなくのクラス雰囲気ってやつだ。
学校ではない、場所だからということもあるよね。
「うん。時間あるよ」

そして、待合室の椅子に座る。
「色々と聞きたいんだけど、なんでこんなところで働いているの?」
別に働いているわけではなく、ただのお手伝いなのにな。
他の人からは、働いているように見えるんだね
「初日の自己紹介覚えてるかな。その時に言った力を使ってるってだけ」
彩音ちゃんにまで、変な目でみられるのが嫌で少し警戒しながら話す。
そのため少し口調が強くなる。
「覚えてるよ。私、実はその力のこと信じてたの。だから話してみたかった。でも雰囲気にのみ込まれちゃって」
すごく勇気をだして、一つ一つを考えながら話しているように見えた。
「そうだったんだね。だったら他にも何か聞きたいことあったら答えるよ」
私はそのことを聞き、安心した。
そして、最初とは真逆ぐらいの柔らかい口調で話す。
「あのね、私の将来の夢は獣医師なんだ。だから、その力を使ってるところ見てみたいな」
「勅使河原さん、ここの院長先生に聞いてみるね」
そう言って、病院の奥にある院長室に向かう。
院長室に勅使河原さんがいるって看護師さんが言っていたから。

ノックをするとすぐに出てきてくれた。
そして、彩音ちゃんが来ていること、ココミエを見てみたいって言っていたことを話した。
「それなら、来週また二人でおいで。そのときに手伝ってもおうかな」
「わかりました。ありがとうございます」

それを聞いた私は、待合室に戻った。
「彩音ちゃん。また来週おいでだって」
「わかった」
連絡先を交換してから別れた。
来週、いつも以上に楽しみ。
彩音ちゃんともっと仲良くなれないかな。
ココミエの誤作動が起きないことを願います。

今日は、彩音ちゃんと動物病院に行く日。
学校前で待ち合わせして、動物病院に一緒に向かう。
「この間、私の将来の夢について少し話をしたけど、琴羽ちゃんはどうなの?将来の夢」
行く途中に彩音ちゃんが訊ねてきた
「私ははっきりはまだしてないけど、動物に関わることかな」
よく考えてみると、私は将来についてあまり考えたことがなかった。
だけど、ココミエは活躍させたい。
「絶対に琴羽ちゃんに向いてると思うよ」
「そうかな。ありがとう。話は変わるんだけど、ココミエうまくできるか少し緊張してるんだよね」
「ココミエ?」
彩音ちゃんに話してなかったんだ。
ココミエって呼んでるってこと。
「私の力のことだよ。ココミエって呼んでるの」
「なんか、可愛いね。ココミエって」

「勅使河原さん、彩音ちゃんと来ました」
受付に待機していた、勅使河原さんに声をかけた。
「今は患者さん来てないから、入院している患者さんの心を読んでもらおうかな」
入院室に入るのは初めてだから、余計に緊張するな。リラックスしないと。
「わあ。すごいね。いつもこんなところに来てるんだね」
彩音ちゃんは歓声をもらしている。
入院室にはたくさんのケージやキャリーケースが並んでいた。
その中にはさまざまな種類の犬や猫が入っている。
「順番に心を読んでもらってもいいかな。終わったらどんな気持ちか教えて」
「はい。頑張ります」
私は一匹一匹の心を読んでいく。
「この猫は、隣の子が騒がしくて困っていると言ってます。こっちの犬はエリザベスカラーを外したいと言っています」
「ありがとう。この子は今日退院だから大丈夫だよ」
それからも心を読んだ。
色々な心の声が聞こえてきたよ。
ほとんどは、良いことではなかった。
そして私達は帰路についた。
「琴羽ちゃん、すごかったね。そういえば、うちのレオはどうだったの?」
「レオくんはすごく病院慣れしていていい子だったよ」
学校の前に着いたので、彩音ちゃんと別れた。
無事に今日のことを終えられてよかったよ。
それに誤作動も起きなかったしね。

夏休みに入ってから数日が経った日。
今日も動物病院に行ったけれど、誤作動を起こしてしまったのだ。 
そして、すぐに帰ってきたのだった。
今は、学校の宿題に取り掛かっているところ。
思い出すと集中できない。
それに問題も難しくてわからない。 
後回しにしよう。