別れてくれない?浮気性彼氏くん。

――プーッ、プーッ……


言ったんだ。別れてって。自分の口から。


今は3時10分。


1時間ちょっとも電話していたらしい。


それなのに、母らはまだ帰ってこない。


ネオン街でも行ってんだろう、どうせあの2人のことだから。


もしかしたら、いつか逮捕……されちゃったり?


そんなことないでしょ、と自分に言い聞かせる。


重い体を椅子から剥がし、冷蔵庫の扉を開けて。


そこからひんやりとした麦茶を取り出し、ムキになった勢いで瓶のまま飲んだ。


「冷た…」


つい、漏れた心の声。


その言葉は、かすかな風の音にでもかき消されてしまうほど、弱くて情けない。


「伊桜里、やっぱあんた最低だよ、私結構メンタル鋼なのに……」


手に持ったままで、手という名の牢屋からするりと抜け出しそうになっていた麦茶の瓶を、慌てて強い力で持ち直す。


机の上に麦茶の瓶をそっと置き、真っ白で、雪のようなレースカーテンを開けた。


あいにく空はどんよりしていて、今の私の心をそっくりそのまま移したよう。


こんな夜、月くらいは、見えてもいいのに……


気分沈んじゃうじゃん。


その空から目を背け、カーテンをシャーッという音を立てて閉めた。