黒瀬くんは、まだ私がきたことに気づいていない様子だ。
近づきつつ声を掛けるタイミングを窺っていれば、隣の男の子が突然「は!? マジかよ!」と大きな声を出したものだから、驚いて咄嗟に――黒瀬くんたちが背を預けている壁の陰に身を隠してしまった。
「マジだよ。というか、そろそろどっか行ってくれない?」
「えぇ、いいじゃん。だってお前って、待ち合わせてもそこに女がいなかったら即帰るタイプだったろ?」
「んー、まぁ」
「なのにお前が、遅刻した女の子待ってるとか……俺、信じられねぇんだけど」
「そう?」
話している雰囲気から察するに、二人は親しい間柄のようだ。
男の子の言葉に黒瀬くんは素っ気なく返してはいるけれど、そこまで邪険にあつかうことなく会話を続けている。



