逃げられるものならお好きにどうぞ。



***


聖なる夜ともいわれる、クリスマス・イヴ当日。その日はあっという間に訪れた。


待ち合わせ場所まで駆け足で向かいながら、スマホの画面を確認する。

そこに示されている時刻は“17:10”。



――完全な遅刻だ。早めに家を出て、近くの書店で時間を潰して待っていたっていうのに……まさか道中で迷子に遭遇するだなんて思ってもみなかった。

母親が思ったよりも早く見つかったから良かったけど……黒瀬くん、待ってくれてるかな。



黒瀬くんには遅れそうな旨を説明して、近くのカフェにでも入って待っていてほしいとメッセージは入れてあるけど……急がないと。



待ち合わせ時刻から遅れること十五分。

駅近くにあるからくり時計の下に、黒瀬くんの後ろ姿が見えた。寒かっただろうに、外で待っていてくれたみたいだ。



そして、黒瀬くんの隣に人影が一人分。

――それは、見知らぬ男の子だった。


いつもは女の子と一緒にいるイメージがあったから、年の近そうな同性の子と話している黒瀬くんを見るのは、何だか新鮮に感じる。