逃げられるものならお好きにどうぞ。



「……あ、雪」

「どうりで寒いわけだよね。百合子さん、これ使って。風邪ひくと悪いから」



空から白い結晶がふわりと舞い降りてきた。初雪だ。

黒瀬くんが、自身の首に巻いていたマフラーをとって私の首にかけてくれる。



「私は大丈夫だから。黒瀬くん、コートも羽織ってないでしょ。私より、黒瀬くんの方が風邪ひいちゃう」

「大丈夫だよ。その時はまた、百合子さんに看病してもらうから」



そう言って、大きな掌に左手を攫われる。

繋がった黒瀬くんの手は冷たいはずなのに、そこからじんわり熱が伝わってくるような気がして、何だかひどく安心する。