逃げられるものならお好きにどうぞ。



「あと、さっきのドレス。すごく似合ってたよ。可愛かった」

「……さっきは無視したくせに」

「うん、ごめんね。もうしないから」



わざとそっぽを向いて言えば、黒瀬くんはクスクス笑って、軽い謝罪を口にした。



「ほら、家まで送っていくよ。行こう――百合子さん」

「え、名前……」

「うん、呼びたいなって思ったから」

「……まぁ、いいけど」



――前は、名前で呼ぶの、嫌がってたみたいだったのに。


私も、別に呼ばれ方なんてどうでもいいって、そう思っていたはずなのに……でも今は、名前を呼んでもらえたことが、こんなにも嬉しい。