もしかしたら、目の前にいる男性の仲間かもしれない。
怖くなって持っていたバッグを後ろの人物に向けて思いきりぶつけてやれば、肩に乗っていた手が離れていく。
「いたっ、お姉さん、俺だよ」
「……くろせ、くん?」
そこに立っていたのは、黒瀬くんだった。
依然としてチャコールグレーのタキシードに身を包んだままで、その息は上がっている。ここまで走ってきたのだろうか。
「はぁ、……無事でよかった」
安堵した様子で溜息を漏らした黒瀬くんに、抱きしめられる。
その身体はすごく熱くて、くっついた胸元からはトクトクと早い心音が伝わってきた。
やっぱり、ここまで走ってきてくれたみたいだ。
「どうして、黒瀬くんがここに……?」
困惑を顕わにしたまま問えば、「お姉さんがいないことに気づいて、慌てて出てきたんだ」と返される。



