逃げられるものならお好きにどうぞ。



そもそも、さっきお姉さんが言っていた“佐藤さん”とは誰なのだろうか。

多分、一緒にバーで飲んでいた男性だろうけど……何で私をこのホテルに? そもそもお支度って、何を支度するというのか。


頭の中はハテナで埋め尽くされている。



そして、依然として状況を把握できていないままに、ネイビーのミモレ丈のドレスを着せられ、髪を纏められてメイクまでしてもらった私は、ホテルの一階にあるパーティー会場に案内されていた。



「衣装代からパーティーのお代まで全て佐藤様に頂いておりますので。今宵はお楽しみください」

「いや、あの……」



――だから、佐藤様ってどなた様ですか?



そんな私の疑問はにっこり笑ったお姉さんに見事にスルーされ、広いパーティー会場に訳も分からぬまま取り残されてしまった。