「……あの、すみません。私も帰りますね」
グラスの中身を空っぽにして、掛けておいたコートを羽織ろうとすれば、男性に軽く手首を掴まれて止められる。
「少しだけ、一緒に飲みませんか?」
「いえ、私は……」
「駄目、ですか……?」
眉を下げてしょんぼりした雰囲気を醸し出す男性に、少しだけ絆されそうになるけど、小さく頭を振ってきっぱり断りの言葉を口にする。
「その、私……今気になってる男性がいるんです。だから、あなたと二人きりでは飲めません。ごめんなさい」
自分で口にしておきながら、気になってる人がいるとか――初対面の人に何を暴露しているのかと、急激に恥ずかしくなってきた。
そのまま頭を下げて立ち去ろうとすれば、また男性に手首を掴まれ、引き止められてしまう。



