逃げられるものならお好きにどうぞ。



三奈と一緒に振り返れば、長い黒髪を後ろで一つに結んでいる、綺麗な顔をした男の人が立っていた。

その視線はまっすぐ私たちに向けられている。



「すみません。よろしければお隣、座ってもいいでしょうか?」

「いや、私たち…「はい! どうぞどうぞ!」



断ろうとすれば、私の声に被せて三奈が食い気味に了承してしまった。

背もすらりと高くて色気が漂っていて、面食いの三奈が好きそうな顔立ちをしている。



「ありがとうございます」



爽やかに笑った男性は律儀にお礼の言葉を告げて、隣に腰掛ける。


――何故か、私の隣に。