「……ふふ。百合子ちゃんって、案外気が強いのね。でも……あんまり調子に乗ってると、痛い目見るわよ?」 ニコリと笑った美代さんが、小さく掌を振り上げるのが見えた。 まさかこのタイミングで手を出されるなんて思ってもみなかったから、身を守ろうにも、咄嗟のことで身体は固まって動かない。 ぶたれる覚悟で目だけ瞑って歯を食いしばる。 ――けれど、感じると思っていた痛みは、いつまでたってもやってこない。 そっと瞼を持ち上げれば、いつの間に戻ってきていたのか、目の前には黒瀬くんの背中が広がっていた。