「っ、……ちょっと椿くん! 人目もあるのに、こんなところで……!」
「大丈夫だよ。薄暗いし、皆もうすぐ始まる花火大会のことで頭がいっぱいで、周りなんて気にしてないだろうし。そもそも後ろの方だし、誰も俺たちなんて見てないでしょ」
「だからって……!」
「それに、一年前に約束しただろ?」
「え? 約束って……花火を見に行こうって約束のことでしょ?」
「それはもちろんそうだけど。もし破ったら、百合子さんが俺に百回キスしてくれるって指切りしたの、まさか忘れてないよね?」
――そう言われると、そんな約束をしたような気も、しないでもないけど……。
「百合子さん、俺を置いて一人で行ったじゃん。これは百合子さんの方からキスしてもらわないとだよね」
「そ、それは謝るけど……でも、結局は一緒に見にこれたわけだし、約束を破ったわけにはならないんじゃ……」
「んー?」
しどろもどろになりながら言い訳をしてみるけど、椿くんはにっこり笑いながら小首を傾げている。
これは……置いて行かれたことを、かなり根に持っているみたいだ。



