逃げられるものならお好きにどうぞ。



「……はぁ、わかったよ。仕方ないから、今回は百合子さんの言い分を受け入れてあげる」

「うん、ありがとう」

「それに、会いたくなったら俺がそっちまで行けばいい話だしね」

「……うん。でも、頻度は考えてね?」



私の出張先は、新幹線で二時間近くはかかる場所になる。

さすがにないとは思うけど……椿くんなら毎日会いにきてもおかしくはないから、一応釘をさしておく。



「ねぇ、百合子さん」



スマホを開いてメッセージがきていないかを確認していれば、椿くんに名前を呼ばれる。

顔を上げれば、椿くんの顔が間近に迫ってきた。

そして、前触れもなくキスをされる。


すぐに離れていくと思った唇は、触れたままで甘い熱を送り続けてくる。

何度も角度を変えておこなわれるそれに、息が苦しくなってきた。


椿くんの腕を軽く叩いて抗議すると、ようやく離れていく。

黒瀬くんの髪が頬にかかって、少しだけくすぐったい。