逃げられるものならお好きにどうぞ。



***


会場は例年通り、たくさんの人で賑わっていた。

――今から一年前、椿くんと一緒に見に行こうと約束していた花火大会だ。


観覧席は予約していないので、たくさんの人混みに紛れて空いているスペースを探して、後ろの方にあった植え込みのふちに腰を落ち着かせる。

腕時計で時刻を確認すれば、打ち上げ開始まで、まだ三十分くらいの時間がある。



(……椿くん、怒ってるかな)



新幹線を下りて改札を抜けてすぐ、椿くんに折り返しの電話をしたんだけど、連絡がつながることはなかった。

メッセージを確認したけど、それも入っていない。

私は一言“ごめんね”とだけ送って、既読が付く前に、スマホをポケットに仕舞ってしまった。



「ねぇ、お姉さん。もしかして一人なの?」



耳に入ってくるざわめきをボーッとしながら聞いていれば、肩にそっと誰かの手が触れてきた。


――もしかして、ナンパだろうか。


一瞬身構えてしまったけど、相手の顔を目にした瞬間、私は驚きで瞳を瞬いた。