逃げられるものならお好きにどうぞ。



(……椿くんの、バカ)



心の中でそう呟きながら、思い出してしまうのは、数日前の出来事だ。


――あの日、私は、椿くんを本気で怒らせてしまった。


だけど、私にだって譲れないものがある。

お互い引くに引けなくなってしまって……あの日以来、椿くんとは顔を合わせていない。


帰省だって、本当だったら椿くんも一緒のはずだった。

だけど今回の言い合いは、今までにないくらい激しいものになってしまったから……もしかしたら椿くんは、一緒に行ってくれないかもしれない。


少しだけ憂鬱な気分になりながらも、一旦気持ちを切り替えて、業務に集中することにした。