「椿くん……思い出したの?」
「うん。少しずつ思い出しかけてはいたんだけど、さっきボトルで思いきり頭をやられた時に完全に思い出したよ」
私の目の前で足を止めた椿くんは、頭を下げる。
「百合子さん、ごめんね。心配かけて、傷つけて……悲しい思いをさせて」
「……本当だよ。何であんな薬なんて飲んじゃったの?」
「仕事中に、憂美さんとばったり会ったんだ。あの人、裏社会に通じるような連中ともつながりを持ってる人だからさ。欲しかった情報を貰う代わりに、一杯だけ付き合ってって頼まれたんだけど……そこからの記憶があやふやだから、その時に仕込まれたんだろうね」
表情のない顔でそう言った椿くんは、私の手をそっと握って、微笑む。



