「これ、全部憂美さんがやったわけ?」
「……えぇ、そうよ」
「何でこんなことしたの」
「何でって……そんなの、決まってるじゃない。私と椿のためよ。私と椿が二人で幸せになるためにしたことよ」
「俺はそんなこと聞いてないし、望んでないけど」
椿くんは、努めて冷静だった。
真っ直ぐな目で見つめてくる椿くんに、憂美さんは僅かにたじろいでいるようにも思える。
「わ、私は……あの時が、椿と二人きりで生きていた時間がすごく大切で……だから椿にも、今なんて全部忘れて、あの時の気持ちを思い出してほしかったのよ。椿だってそうでしょう?」
「っ、それで、椿くんの記憶を消したんですか? 椿くんの気持ちは考えなかったんですか?」
憂美さんの言い分に納得がいかなくて、思わず口をはさんでしまった。
だけど憂美さんは、しれっとした顔で答える。
「考える? そんなの、考えなくても分かることよ。椿にとっても、私と過ごしていたあの頃が、何よりも大切に決まってるんだから」
独りよがりなその言動に、カッと頭に血がのぼる感覚がする。



