「百合子さん、無事? どこかケガは……っ、あー、あの男、やっぱり殺してやろうかな」
肩を掴まれて、顔をグッと近づけられる。
そして私の左頬をまじまじ見ると、仄暗い目をして、すでに再起不能となっている男のもとへ向かおうとする。
私は慌てて椿くんの手を掴んで引きとめた。
「ちょっと待ってって! 本当に大丈夫だから! 大した怪我じゃないし! っていうか、椿くん……」
――今、私のこと、名前で呼んでくれたよね? 記憶を失ってからは、お姉さん呼びだったのに。もしかして、記憶が戻ったの……?
困惑と、微かな期待が胸に広がる。
椿くんに真相を確かめようとしたところで、カツカツと二人分のヒールの音が聞こえてきた。



