逃げられるものならお好きにどうぞ。



「へぇ、まだ動けたんだ」



だけど椿くんには、全然効いていないみたいだ。

薄笑いを浮かべて男を見つめている。



「椿。嬢ちゃんの頬、これをやったのは、ソイツだぞ」



皇さんが私の片頬を指さしながら言う。

すると椿くんは、無表情のまま、片眉をピクリと動かした。



「……ふーん、そうなんだ」



そして、次の瞬間。


――椿くんは、ものすごい勢いで拳を振りかざした。

椿くんよりもずっと体格のいい男が吹っ飛んでいく。



「――お前如きクズが触れていい人じゃないんだよ」



地を這うような低い声でそう言った椿くんは、転がったままの男の腹部に思いきり足を振り下ろした。

吐瀉した男を冷めた目で見下ろしながら、更に追撃しようとしているので、私は慌てて待ったを掛ける。



「椿くん、待って! もういいから! 十分だよ!」



私の制止の声に、椿くんは足を止めた。

男を軽く蹴とばしてこちらに振り向いたかと思えば、無表情で近づいてくる。