「皇さんは……私のことを綺麗な人間だって言ってくれたことがありましたけど、全然そんなことないんです。私ね……憂美さんに嫉妬してるんです。憂美さんは、私の知らない椿くんを知ってる。それが悔しくて……私の方が、椿くんのことが好きなのにって。自分の中に、こんなにもドロドロした感情があるんだって驚きました」
「……」
「だからこれは、椿くんのためだけに行くんじゃないんです。椿くんの記憶を取り戻したいって思いも勿論ありますけど、私が、負けたくないから。胸を張って椿くんの彼女だって言えるように……私自身のために、首を突っ込んでるんです。だから、行かせてください」
皇さんの目を真っ直ぐに見つめる。
この人に嘘は吐きたくないと思ったから、今のありのままの思いを伝えた。
「……だが、もし椿の記憶を取りもどせなかったらどうするんだ?」
「例え椿くんが、このまま私のことを思い出してくれなかったとしても……かまいません。それなら、また好きになってもらえるように頑張ります。今度は私が、椿くんを追いかけますから」
「……はぁ。本当に嬢ちゃんは……強情な女だな」
私の手首を掴む力を緩めた皇さんは、眉を下げて困り顔で笑うと、自身の前髪をくしゃりと掻き上げた。



