逃げられるものならお好きにどうぞ。



店を出れば、空は茜色に染まっていた。街路樹もすっかり色づき、秋の装いをしている。

だけど、あっという間に冬がやってくるんだろうな。


椿くんと、お付き合いすることになった季節。あれからもう一年も経つんだ。

……ううん、逆に言えば、まだ一年しか経っていないんだよね。


だけど椿くんと出会ってからの毎日は、これまで変わり映えがなく味気ないともいえる日々を過ごしていた私にとって、大げさかもしれないけど、世界が変わっちゃったって思えるくらいにはドキドキの連続で。

だけどすごく楽しくて、密度の濃い時間だった。


――今年も、椿くんと一緒にクリスマスを過ごせたらいいな。


ちょっぴりノルスタジックな気持ちになりながら、のんびりと歩いていれば、スマホが着信を知らせた。


通話ボタンをタップした私は、足を止めて二言三言会話をすると、自宅の方に向けていた足を方向転換した。――向かう先は、“Bar curación”だ。