逃げられるものならお好きにどうぞ。



「実は俺、最近は仕事もプライベートも結構忙しくて、椿とも全然連絡とれてなかったんですよ。でも椿のやつ、変わらず元気にしてるんですよね?」

「……うん、そうだね。元気にしてるよ」



どうやら田中くんは、椿くんが記憶喪失であることは知らないみたいだ。

といっても美代さんたちのことは覚えていたから、田中くんのことだって忘れているわけではないと思うけど。



「なら安心しました! 今は香月さんがいるから心配ないですけど、昔は相当ヤンチャしてたじゃないですか。無意味な喧嘩吹っ掛けては怪我したり、夜遊びしたりして……まぁそれも、寂しかったからじゃないのかぁなんて、俺は思ってたんすけど」

「え?」

「ほら、椿って親が居なくて、施設育ちだって言ってたじゃないですか。……やべ、もしかして知りませんでしたか?」

「ううん、本人から聞いたことあるよ」



ホッとした顔で胸をなでおろした田中くんは、話を続ける。