「……頬っぺた、痛い?」
「ん? ……あぁ、さっき皇さんに殴られたところ? まぁ普通に痛かったけど……あそこまでキレてる皇さんなんて中々見ないし、俺がお姉さん絡みのことで何かしちゃったんだよね?」
「……」
何て答えていいのか分からなくて困っていれば、足を止めた椿くんは、真面目な顔をして私を見つめてくる。
「俺さ、別に過去を懐かしんだり振り返ったりするようなタイプじゃないんだけど……でも、何か大切なことを忘れているんだとしたら、ちゃんと思い出したいって思うんだ」
「それじゃあ……私のことも、思い出してくれる?」
私がポツリと呟くと、椿くんは僅かに驚いた。
そして、すぐに物憂げな笑みを浮かべる。
「……うん。お姉さんのことも、絶対に思い出すからさ。待ってて」
そう言って、私の頭をそっと撫でてくれた。
――やっぱり、椿くんは椿くんだ。
何だか涙がこみあげてきて、でもここで泣いたら椿くんを困らせちゃう気がしたから、グッと堪えて笑顔を作った。



