逃げられるものならお好きにどうぞ。



「っ、慎二さん!?」



いつもの可愛らしい声に戻った美代さんの、悲鳴じみた声が響く。

私は目の前の光景に、口許を抑えて固まってしまった。



「言ったよな。泣かせるような真似はすんなって。嬢ちゃんにとって、オマエのそばにいることが一番の幸せだと思ってたんだが……これ以上傷つけるような真似すんなら、もう遠慮はしねーぞ」



そう言った皇さんは、ぎらついた目で椿くんを見下ろしている。



「いった……皇さんもさぁ、さっきから何言ってるわけ? 嬢ちゃんって、そこにいるお姉さんのことを言ってんの?」



口の端が切れて滲んだ血を手の甲で拭った椿くんは、座りこんだままの体勢で、私を見上げてくる。