逃げられるものならお好きにどうぞ。



「あれ、この前のお姉さんじゃん。また会ったね」

「……」



ひらひらと手を振られる。それを黙って見つめていれば、私の目の前で、何かがブチリと切れたような音がした。



「椿、アンタねぇ……ふざけんじゃないわよ」

「……え、何? 何で美代さんはブチ切れてるわけ?」

「……テメェが何処で野垂れ死のうがこっちは知ったこっちゃねえがな、テメェの勝手で好きな女悲しませてんじゃねーぞ」



前にゲームセンターでホッケーをした時と同じオーラを纏っている美代さんは、怖い顔をして椿くんの胸倉を掴む。

そんな美代さんを窘めるように「まぁまぁ、一旦落ち着きなって。素が出ちゃってるから」と、萌黄さんがやんわり肩を叩いた。


胸倉を掴まれた椿くんは、訳が分からないといった顔をして小首を傾げながら、美代さんの隣に立つ萌黄さんに視線を向けている。