逃げられるものならお好きにどうぞ。



「……そうですね。記憶が戻ったら、椿くんには言ってやりたいことがたくさんあります」

「そうよそうよ、言ってやりなさい。説教ついでに、椿のお金で皆で美味しい物でも食べに行きましょ」

「オレ、肉が食べたいなぁ。最高級のやつ。黒毛和牛とか」

「それじゃあ私はお寿司にしようかしら。銀座のミシュランのお店がいいわね。慎二さんは何が食べたいですか?」

「そうだな……そんじゃあ俺は、美味い酒でもご馳走してもらうとするか。な、嬢ちゃん」

「……はい。楽しみです」



皆の優しさに、強張っていた顔が自然と緩んでいく。

その後も、椿くんの記憶が戻ったら食べたい物(=奢ってもらいたい物)の話で盛り上がっていれば、カラン、と入店を知らせるベルの音が響く。