「……ねぇ、椿くん。覚えてる? 京都旅行に行った時、一緒に着物をきて神社に参拝に行ったこと」
「え?」
「あの時、一緒に絵馬を書いたでしょ? この前ね、その時の絵馬の写真を美代さんに見られてね、相変わらずのバカップルねって笑われちゃったんだよ。それに、この前新潟に行った時には、約束もしたよね。今回は行けなかったから、来年は一緒に花火を見に行こうって。それから…「あのさ」
椿くんなら絶対に知っているはずの思い出や約束を語っていれば、ひどく冷めた声に遮られてしまう。
「お姉さん、さっきから何言ってるの? 誰と勘違いしてるのか知らないけど、俺はそんなこと知らないよ」
「……」
目の前でニコリと笑っているのは、確かに、椿くんのはずなのに。
私の知っている、私がこれまで一緒に過ごして、たくさんの思い出を作ってきた椿くんとは、まるで別人みたいに思えて。



