逃げられるものならお好きにどうぞ。



行く当てもなく歩いていればポツポツと雨が降ってきたので、鞄に入れていた折り畳み傘をさした。

階段を上がって鉄橋から見下ろせば、真下をビュンビュンと車が通り過ぎていく。それをボーッと見ていたら、あることを思い出した。



(そういえばこの鉄橋って、びしょ濡れで座りこんでいた男の子に声を掛けて、絆創膏を差し出した場所だ)



あの男の子が椿くんだったって、京都旅行でやっと気づくことができたんだ。



(ねぇ、椿くん。今どこにいるの?)



心の中で、椿くんの名前を呼ぶ。だけど何度呼びかけてみても、どれだけ願っても、椿くんは見つからない。


でも、せめて……どうか、無事でいてほしい。

彼が苦しんでいることがないようにと、神様に祈ってしまう。



しばらくボーッとしていたけど、別の場所を捜してみようと考え、足を動かそうとした。


その時だった。

私の真横を、黒い傘をさし、黒いフードをかぶった男性が通り過ぎていく。