“Bar curación”と書かれているプレートを横目に店内に続く扉を開けば、真っ先に美代さんと目が合った。
カウンター席に座っていた美代さんは、グッと眉根を寄せて、心配しているような、少しだけ怒っているようにも見える顔をして近づいてくる。
「ちょっと百合子ちゃん、ひどい顔してるわよ」
「……そうですか?」
「最近ちゃんと寝れてるの?」
「……はい。大丈夫ですよ」
美代さんを安心させたくて、無理やり口角を持ち上げる。だけど多分、すごく下手くそな笑顔になっていることだろう。
――椿くんがいなくなってから、今日で二週間。
重たい体に鞭打って何とか出社し、定時に退勤してからは、毎日夜遅くまで、椿くんが行きそうなところを手当たり次第に捜していた。
だけど、椿くんは未だに見つかっていない。手掛かりもない。
毎日メッセージだって送っているけれど、既読すらつかない。電話もつながらない。
自分が無理をしているという自覚はあるけれど、ここで弱音を吐いてしまったら、もう、一人じゃ動けなくなってしまいそうで。
何か事件に巻き込まれたんじゃないか……そんな不安に押しつぶされないように、私は気丈に振舞うよう努めていた。



