逃げられるものならお好きにどうぞ。



「俺さ、そろそろあっちの仕事も再開しないとなんだよね」

「皇さんに頼まれてのお仕事のこと、だよね?」

「うん。これからは迎えに行けない日も増えると思うけど、夜道には気をつけてね。それから、人通りの少ない道は歩かないように」



心配性な椿くんに「気をつけるね」と笑い返しながら、家まで送ってもらい、これから早速仕事が入っているらしい椿くんに手を振って、アパートの前で別れた。




それから、二日後のことだった。



『お掛けになった電話は、現在電波の届かない場所にいるか、電源が入っていないため――』



――椿くんと、連絡が取れなくなった。家にも来てくれない。椿くんの家を訪ねてみても、人のいる気配はなかった。


それから更に一週間経っても、椿くんは見つからなかった。

美代さんや皇さん、萌黄さんにも聞いてみたけど、誰一人として、椿くんの居場所を知る人はいなくて。




椿くんは、私たちの前から、忽然と姿を消してしまったのだ。