逃げられるものならお好きにどうぞ。



「……うん、分かった。約束する。どんな相手がきたって、完膚なきまでにボコボコにするし、百合子さんには絶対近づけさせない。百合子さんのことは、何があっても俺が守るから」



――ほら、やっぱり。


「私を守ってくれるのは嬉しいけど、それで椿くんが傷つくのは嫌なの。私が言ってること、分かってる?」



むっと唇を尖らせて伝えれば、何故か椿くんはきょとんとした顔になる。



「……百合子さんってさ、結構俺のこと好きだよね」

「……そうだよ。今更でしょ?」

「ふは、そうだね。でも、今すごく実感したんだよ」



真顔で指摘されたことが恥ずかしくて素っ気ない返しをしてしまったけど、椿くんは嬉しそうに目を細める。



「それじゃあ俺は、百合子さんを泣かせないためにも、絶対に誰にも負けられないなぁ。百合子さんは、俺が仕事でそばに居ない間とか、他の男に余所見しちゃダメだからね? それにこれからは、俺が帰ってきたら毎日おかえりなさいのキスでお出迎えしてほしいな」

「……それは約束できかねるかも」

「だーめ。百合子さんの言ったこともちゃんと守るから、百合子さんも約束ね」



クスリと笑った椿くんは、私が手にしているアイスの棒を攫っていったかと思えば、空いた私の左手を持ち上げて、薬指の付け根にキスを落としてくる。

こういった気障な仕草も、椿くんがやると様になってしまうから、やっぱりズルいと思う。