逃げられるものならお好きにどうぞ。



「早かったね」

「……椿くん、何だかドラマに出てくる主人公みたい」

「え?」

「朝ドラとかで、こういうシーンがありそうだなぁって」



だって、すごく絵になっている。

やっぱり椿くんって、今を時めく人気俳優にも負けないくらいに格好いいんだなぁって、改めて実感してしまった。彼女の贔屓目をなしにしたってそう思える。



「それじゃあ、ヒロイン役は百合子さんだね。どうする? この後は、自転車で二ケツでもしておく?」



フッと息を漏らすように笑った椿くんが、茶目っ気を孕んだまなざしで尋ねてくる。



「……そのまま海に行っちゃったりして?」

「海に向かって愛の告白をしたり?」

「ふふっ。すっごいベタ」



ドラマに出てきそうなシーンを出し合いながら、店頭に出ている冷凍ケースの中を一緒に覗き込む。


視線を感じて顔を上げれば、奥に座っている白髪のおばあさんと目が合った。ペコリと頭を下げれば、にこやかに微笑みながら会釈をしたおばあさんは、手元の本に視線を移す。

子どもの頃に比べたらずいぶんとお年を召してはいるけれど、いつ見ても穏やかで優しそうな人だ。