――何だか無性に、椿くんに会いたくて仕方がない。
早く、早く会いたくて。気づけば私は、地面を蹴って走り出していた。
風を切って走れば、ワンピースの裾が足に張り付いて邪魔をする。
それを無視して足を前へ前へと動かせば、少し古びた木造建築が道路脇に見えてくる。
黒色の瓦屋根に、所々塗装が剥がれている外壁。二階建ての建物になっていて、一階には臙脂色の庇が付けられている。
そして店の側ではためく、白い文字で『だがしや』と書かれた薄水色ののぼり旗。
「あ、百合子さん」
青い空に、白い雲。夏真っ盛りのコントラストを背景に、駄菓子屋さんの前に置いてある少し古びたベンチに腰かけている椿くん。
店の脇には、向日葵の花が数本咲いている。



