逃げられるものならお好きにどうぞ。



「……ごめんね、ゆっちゃん。椿くんを待たせてるから、私はそろそろ行くね」

「あ、そうだった。長い時間引き止めちゃってごめん。それじゃあ、また連絡するね!」

「うん。またね」



耳打ちしたゆっちゃんには手を振って、明らかに視線を感じる小林には、あえて目を合わせないまま軽く会釈だけして、横を通り過ぎる。

足早にこの場を去って、次の角を左に曲がった。


ふぅっと息を吐き出しながら歩く速度を緩めれば、後ろから、私を呼びとめる声が聞こえてくる。



「百合子、待てよ!」

「……何?」



歩みを止めて渋々振り返れば、私を追いかけてきた小林が、口角を上げて偉ぶったような態度で話しかけてくる。