逃げられるものならお好きにどうぞ。



「……もしかして、百合子?」

「え?」



振り向けば、後ろから声を掛けてきたのは、黒髪セミロングで、丸眼鏡をかけた女性だった。歳は多分、私と同じくらい。

目を丸くして私を見つめるその顔を見ていたら、過去の懐かしい記憶がよみがえってくる。



「……もしかして、ゆっちゃん?」

「やっぱり百合子だ! キャー、久しぶり~!」



ぱっと笑顔を咲かせたゆっちゃんに、抱きつかれる。


橘由衣ちゃん――通称ゆっちゃんは、私の小学校の時の同級生だ。

中学までは一緒だったけど、高校は別々で、それからは連絡をとることも減って、疎遠になってしまっていた。