逃げられるものならお好きにどうぞ。



「わっ……私たち、ちょっと近くを散歩してくるから! 椿くん、行こ!」



生温かい空気を感じるこの空間にいるのが居た堪れなくなってしまった私は、勢いよく立ち上がった。

未だに微笑ましいまなざしを向けてくるお母さんはスルーして「いってきます!」とサンダルを履く。



「はーい、いってらっしゃい。椿くん、百合子のこと、よろしくね」

「了解です、お母さん」



――って、椿くんもちゃっかりお母さん呼びしてるし。



一足先に外に出れば、肌にひりつくような熱が纏わりついてくる感覚。

ミンミンと鳴く蝉の合唱が、殊更この暑さを助長させているような気がする。