逃げられるものならお好きにどうぞ。



「何か、一人ではしゃいじゃってごめんね?」

「あはは、何で謝るの? むしろそういう姿、俺にももっと見せてほしいな」

「子どもっぽい姿を?」

「うん。子どもっぽい姿っていうか……俺の前では気なんて遣わないで、自然体でいてほしいってことだよ」



椿くんの手が、私の手にするりと重なる。

どちらともなく手をギュッと握り合い、笑みをこぼしながら「うん」と頷いた。



「ふふふ、仲良しねぇ」



そのタイミングで耳に届いた声に、驚いた私は小さく肩を揺らしてしまった。

玄関に続く扉の方を見れば、少しだけ開いた隙間から、にやにやと口許を緩ませているお母さんの姿が見えた。


来客対応をしていたはずなのに――いつの間にか戻ってきて、私と椿くんのやりとりをこっそり見ていたらしい。