逃げられるものならお好きにどうぞ。



「お父さんね、今出掛けてるのよ。あと一時間もしたら帰ってくると思うし、それまでゆっくりしてて。私は夕食を準備しておくから。あ、椿くん、苦手なものとか食べれないものはある?」

「いえ、何でも食べれます」

「なら良かったわ」



お母さんはずいぶん張り切ってくれているみたいだ。

だけど、時刻はまだ十五時前。夕食を準備するには早すぎる気もする。



「もう夕食の準備をするの? 早くない?」

「せっかく椿くんも来てくれたんだから、今日は早夕飯にしちゃってもいいかなと思って。美味しい物いっぱい作るからね」

「手伝おうか?」

「いいわよ。時間もあるし、二人で近くでも散歩してきたらどう?」



その時、ピンポーンとチャイム音が響いた。

「あら、宅配かしら」と呟いたお母さんは、スリッパの音をパタパタ鳴らしながら玄関に行ってしまう。