逃げられるものならお好きにどうぞ。



「うん、そうだね。来年は絶対、一緒に見に行こう」

「それじゃあ、はい」

「……ふふ、もしかして指切り? 指切りするのなんて、子どもの時以来かも」



差し出された椿くんの小指に、自身の小指を絡ませて軽く振る。



「指切りげんまん、嘘吐いたら、百合子さんは俺に百回チューするの刑~」

「え、何それ」

「はい、指切ったー」



小指を離した椿くんは、ニコニコ嬉しそうに笑っている。



「……私が知ってる歌詞とは、違った気がするんだけど?」

「そうだった? それじゃあこれが今最先端の歌詞になってるから、百合子さんも覚えておくといいよ」

「ぷっ、もう、何それ」



何だか力が抜けて、思わず笑みをこぼしてしまう。



「……よかった。具合が悪いわけじゃなさそうだね」



私の笑った顔を見た椿くんは、安心したように微笑んだ。

――私がぼんやりしていたから、要らない心配をかけてしまったみたいだ。