逃げられるものならお好きにどうぞ。



「百合子さん、何か欲しいものはある?」



椿くんに唐突に尋ねられたのは、ウィンドウショッピング中のことだった。



「欲しいもの? そうだね……あ、柔軟剤がもう少しでなくなりそうだから、買っておきたいな」

「柔軟剤ね。まぁそれも大事なんだけどさ、俺が言ってるのは、アクセサリーとかバッグとか、もっと特別で高価な物の話だよ」

「特別で高価な物って……どうして突然?」

「百合子さん、今月誕生日だよね?」



私の誕生日は七月二十四日だ。

どうやら椿くんは、私の誕生日プレゼントを考えていてくれたらしい。



「せっかくなら、百合子さんが今一番欲しいと思ってるものをあげたいなって思ってさ。もちろん、物じゃなくてもいいよ。行きたい場所があればどこだって連れていくし、何かしてほしいことでもいいしさ」

「……それじゃあ、椿くんにお願いしたいことがあるんだけど」

「うん、何でも言って?」

「あのね――」



私がした“お願い”が予想外だったのか、椿くんは少しだけ驚いていたけれど、すぐに嬉しそうに頷いて、私の望みを叶えてくれたんだ。