「百合子さん、どこか行きたいところはある?」
「うーん、この辺に来たことってあんまりないから、詳しくないんだよね」
「それじゃあ、この近くに最近オープンしたカフェがあるらしいから、行ってみない? ハンドメイドの雑貨とかも売ってるらしいんだけど、百合子さんが好きそうなデザインだったんだよね」
どうやら椿くんは、デートできるような近場のお店まで調べていてくれたらしい。
ここから歩いていける距離にあるとのことなので、一旦駅のコインロッカーに出張用の荷物を預けてから、店まで歩いて向かう。
「あ、そういえば、帰ったら百合子さんはお仕置きだからね」
「……え? お仕置きって、何のこと?」
「断るまでは良かったけど、最終的に部屋に通しちゃったら、意味ないだろ?」
不意に告げられたその言葉で、昨晩の記憶がよみがえってくる。
「……椿くん、何でそのこと知ってるの?」
恐る恐る尋ねれば、椿くんは繋がった手にきゅっと力を込めて、意地悪げに笑う。
「秘密。甘ちゃんでお人好し過ぎる百合子さんには、教えてあげない」
「……ごめんなさい。今度から気をつけます」
私が林くんを部屋に上げるところを、椿くんはバッチリ見ていたようだ。
何でその場に居たのかとか、色々と突っ込みたいところではあるけど……あれだけ椿くんに気をつけるよう言われていたのに、結局は後輩のお願いを断れず部屋に上げてしまった私が完全に悪いので、非を認めて素直に謝る。



