逃げられるものならお好きにどうぞ。



「百合子さん、迎えにきたよ」

「椿くん……駅前の喫茶店で待っててって言ったのに」

「一秒でも早く百合子さんに会いたかったんだよ」



蕩けるような笑みを浮かべた椿くんが、私の頭にそっと手をのせる。撫でる手つきは、完全に私を甘やかそうとするそれで――ここが外じゃなければ、その胸にぽすんと頭を預けていたかもしれない。



「あ、あの……もしかして、百合子先輩の彼氏さん、ですか?」



ほんのり頬を赤くした佐々木ちゃんが、期待したようなまなざしで尋ねてくる。



「うん、そうだよ」



私が答える前に、にこりと笑った椿くんが、またもや先に口を開いた。

肯定の言葉に、佐々木ちゃんは更に頬を赤く色づかせて、きゃーきゃー言っている。