「お、お前が、香月先輩を誑かしてるんだって、お、俺は知ってるんだからな! 人に言えないような、ヤバい仕事をしてるんだろ!?」
「へぇ。それが何?」
「かっ……香月先輩に、お前の正体をバラしてやる!」
「ふーん。勝手にすれば?」
椿は動揺した様子もなく「で、話はそれで終わり?」と淡々と返す。
林が口をはくはくさせて黙り込んでしまえば、今度はこっちの番だと、椿は形のいい唇を震わせる。
「まぁ絶対に有り得ない話だけど、もし百合子さんが俺から逃げよとしたって、俺はどこまでも追いかけるよ。この人とずっと一緒にいるためなら、他がどうなろうが関係ない。どんな悪事にだって手を染められるし、邪魔する奴は排除してみせる。……百合子さんは優しいからね。そこまでした俺のことを、絶対に見捨てられないだろ?」
目を細めながら口端を持ち上げた椿の笑顔が、林の目には、どこか歪んで見えた。
小刻みに震え出した身体を必死に動かして、少しでも椿から距離をとろうとする。



