このホテルは全室オートロックになっている。確かに鍵がかかっていたはずだ。
だというのに、椿はどうやってこの部屋に入ってきたのか。そもそも何故此処にいるのか。林が百合子の部屋を訪ねていると、どうして分かったのか。
――確かな恐怖と薄気味悪さを感じながらも、林は気丈に振舞う。焦りからかいつもより早口になりながらも、椿をキッと睨み付けた。
「か、勝手に入ってくるなんて、不法侵入ですよね? 警察を呼びますよ?」
「あはは、君、さっきから面白いこと言うね。警察を呼ばれなきゃいけない立場なのは、君の方だろ?」
また一歩、椿は足を前に踏み出す。そして林の目の前に立つと、柔和に細めていた瞳を見開いた。
ギラリと光った目は仄暗く、憤怒の色に満ちている。
「――さっさとその薄汚い手、どかせよ」
「ひっ……!」
ひどく冷めた表情と対面した林は、ヤバい奴に見つかってしまったという恐怖にその身を震わせながらも、何とか言葉を紡ごうとする。



