逃げられるものならお好きにどうぞ。



――ピンポーン。



チャイムの音が響いた。

林は大げさに肩を揺らしたが、無視すればいいと思い、意識を百合子に戻す。けれど……。



――ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。



一定の間隔で、チャイムの音は鳴り続ける。



「っ、しつっこいな! 今何時だと思ってるんだ。先輩、ルームサービスでも頼んでたのかな? それにしても、ここまで鳴らしても出ないんだから諦めろよ。非常識な奴だな」



ぶつぶつ文句をこぼした林は、舌打ちを一つ落として、ベッドから下りようとした。

けれど、気配もなく背後に立っていた男の存在に気づくと、その顔からサッと血の気をなくす。



「非常識な奴? それは自分自身にも返ってくる言葉なんじゃないかな?」

「な……何でお前が、この部屋に……」

「こんばんは。林くん、だっけ?」



ニッコリと笑った椿は、わざとらしく小首を傾げると、林と百合子のいるベッドに近づいてくる。