逃げられるものならお好きにどうぞ。



「あの、椿くん」

「ん? どうかした?」

「その……心配して付いてきてくれて、ありがとう」



色々と文句を言ってしまった手前、何だかばつが悪くて、小声になってしまった。

だけど私の感謝の気持ちは、椿くんにきちんと届いたらしい。



「あはは、どーいたしまして。仕事、頑張ってね」

「あ、それと、もしかしてこの短冊って……」



見覚えのあると思っていた筆跡が、頭の中で一致した。短冊に向けていた視線を椿くんの方に向けたけれど、すでにその姿は消えている。



「百合子先輩、お待たせしました。お手洗い、結構混んでて……って、あ! もしかして短冊を見てたんですか? うわー、可愛い!」



そのタイミングで、佐々木ちゃんが戻ってきた。通話を終えた林くんも戻ってきたところで名前が呼ばれたので、私たちは通されたソファ席に腰を下ろして、メニュー表を開いた。

佐々木ちゃんたちと話しながらも、こっそり視線を彷徨わせてみたけれど、店内に椿くんの姿を見つけることはできなかった。