逃げられるものならお好きにどうぞ。



「……そもそも椿くん、どうして此処がわかったの?」

「んー、何でだと思う?」

「もう、はぐらかさないで!」

「あはは、ごめんごめん。百合子さんがこの辺りに泊まるって言ってたから、目星をつけただけだよ」

「でも、セミナーが終わる時間とか、この店で夕食をとることなんて話してないのに……椿くん、今、店の奥から出てきたよね? どうして私たちがこの店に入るって知ってたの?」

「それはー、……企業秘密かな」



人差し指を口許に添え、わざとらしく小首を傾げている椿くんは、あざといの権化だ。

……やっぱり、顔がいいってずるい。惚れた弱みもあるだろうけど、まぁいいかって、簡単に丸め込まれてしまう。

どうやって情報を入手したのか、理由を追究したいところではあるけど、この感じだと、多分どれだけ聞いても教えてくれないだろうし。