「あぁ、分かった。悲しませたり困らせたりするのは本望じゃねーからな。今のところは、何かするつもりはねーよ」
「……ほんと皇さんって、食えない人だよね。この前“手は出さない”って言ってたくせにさ」
「手は出さないとは言ったが、それはあの時点での話だろ? 未来のことまで約束はできねーからな」
「うっわぁ、ムカつく」
――え、何? 二人が何の話をしているのかは分からないけど……どうしてこんなにピリピリした空気になってるんだろう。
そろりと二人の表情を窺えば、椿くんも皇さんも笑っているはずなのに、何だか雰囲気が怖い。
目の前に座っていたはずの美代さんは机に突っ伏し、すでに夢の世界へと旅立っているし、斜め前に座っている萌黄さんは、またあの気持ち悪い笑みを浮かべてニマニマしているし……これはどういう状況なんだろう?
「皇さんって、ほんっと、どこまで本気なのか分かりづらいよね」
「それはオマエには言われたくねーな」
「まぁ、どっちも面倒なタイプであることに変わりはないよねー」
二人の会話に、萌黄さんが可笑しそうに突っ込んでいる。
そして椿くんは渋々ながら仕事に戻っていってしまい、結局私だけが、最後まで話の内容についていくことができなかった。



