逃げられるものならお好きにどうぞ。



「百合子さん、美代さんから連絡がきてなかった?」

「うん、きてたよ。バーで飲んでるから、良ければ来ないかって」

「あの人たち、すでに飲み始めてるんだよね。出てくる時も、百合子さんを早く連れて来いってうるさくてさ」

「あはは、そっか。それじゃあせっかくのお誘いだし、寄っていこうかな」



椿くんは、バーでの仕事が入っている時でも、こうしてお迎えにきてくれる。仕事が入っていない時は、そのまま私の家にきて泊まっていくことがほとんどだ。

仕事中に彼女を迎えに行くだなんて、普通に考えたら怒られそうなものだけど、抜けた分もきっちり働くという条件で、それはマスターも了承済みらしい。



「あ、きたきたぁ! 百合子ちゃんってば、遅いじゃない!」

「百合子ちゃん、待ってたよ~」

「嬢ちゃん、仕事お疲れさん」



カラン、と軽やかなベルの音を響かせて扉を開ければ、店内には美代さんに萌黄さん、皇さんにと、京都旅行のメンバーが勢ぞろいしている。

今のところ、他のお客さんはいないみたいだ。